「えっ、ここには塔婆がある。大きな塔婆じゃな。」
こういって、モーエはまた若者の顔から腕から、からだじゅうを、なでまわすのでした。
しばらくしてモーエは世間へ出て行きました。
夜明けの鶏が鳴いたとき、モーエは墓場にもどってきて、
「あの二才はどこにも尋ねださんじゃった。あしたの晩くさ、食い殺さんと合点せん」
といって、若者のからだをもう一度なでまわしました。
それから墓の中にはいっていきました。
夜が明けると若者はさっそく神さまのところに行き、墓場での一部始終を申しあげました。
すると神さまは、
「おまえは今夜も気ばらんといのちはなか。今夜も墓場に行たて、はだかになって立っておるのじゃ」
といわれました。そして若者の背中にまた墨くろぐろと、今度は、
「七年忌」
と書いてくれました。
若者はその晩も墓場に行って、はだかになって立っていました。
真夜中にふたたびモーエが恐ろしい姿で現われました。
「さても残念じゃ。今夜こそ食い殺さんといかん。イヒヒヒヒ」
といって、また若者のからだにさわって首から腹からなでまわしていましたが、
「あわ、もう七年忌になったか」
とつぶやいて、急いで世間へ出て行きました。
夜明けの鶏の声がしたとき、またもどってきました。
「あっちこっち探してみたが、今夜も尋ねださんじゃった。まこて残念じゃ」
というと、おいおい泣きながら墓の中へ消えて行きました。
夜が明けたので、若者はまた神さまのところへ行きました。神さまは、
「おまえはごくろうなことじゃが、もう一晩気ばらんといのちはなかど」
といわれました。
そして今度は若者のからだに特別大きな字で死んだ娘の名前と
「三十三年忌」
の文字を書いてくれました。
その晩も若者ははだかになって、墓場に立っていました。
真夜中になってモーエがまた現われました。
今夜はゆうべよりも恐ろしい姿です。
髪をふり乱し、歯をむきだし、怒りにぷるえながら、
「二才はどこにおいか。今夜こそ食い殺してくるっ。イヒヒヒヒ」
というと、若者のからだをなではじめました。