おばけの話 4
「えっ、はや三十三年忌か。」
モーエはびっくりしたようすで、今度は若者の鼻ん穴に指を突っこんだり、耳をほじくったりしてみましたが、おいかわらず人間とは気づかないようすです。
「よし、今夜こそ、いけなことでも尋ねつけて食い殺してやる」
と叫んで、モーエはまた世間めざしてさっととびだして行きました。
鶏が鳴いたとき、また墓場に舞いもどってきました。
「三十三年忌になってもまだあの二才は見つからん。いよいよ、もうあの二才も先の世に行ってしもうたか。
もう今夜かぎりじゃった。もう娑婆で探すのはやめた。先の世で見つけてやろう。」
モーエはこういうと、墓の中にするすると消えてしまいました。
夜が明けると若者はただちにまた神さまのところに行きました。
すると、神さまは、
「おまえのいのちはもう大丈夫じゃ。娘の魂は先の世に成仏したから安心じゃ。
もうこの娑婆には出てこんよ。
わしは、おまえが幼ないときから、わしのところにお伊勢まいりしたいと念願していたことをよく知っていたぞ。
それでは早く家に帰って安心してよか世をくらしなさい」
とおっしゃいました。
若者は神さまに心からお礼を申しあげると、はればれとした気持で元気よく国もとのほうへ帰って行きましたそうな。
おしまい。